マーク・ローランズ「哲学の冒険」
2005年05月02日 00:16 [books] [映画]
「マトリックスでデカルトが解る」との副題が付いた本書は、SF映画を題材にして哲学を解説している。今まで哲学にあまり馴染みがなかったが、わかりやすくて非常に面白かった。
個人的には、第4章「『トータル・リコール』&『シックス・デイ』でアイデンティティ論が解る」と、第5章「『マイノリティ・リポート』で自由意志がが解る」が特に印象的だった。第4章は、人は常に変化しており、自分というものは存在しないという内容。そして第5章では、人は自由に自分の意志で運命を選択しているように見えて、実はそうではないという内容。
第5章の決定論の解説には『マイノリティ・リポート』が題材として使われていたが、『マトリックス』にも決定論を匂わせるシーンがあように思う。1作目でモーフィアスはネオに「運命を信じるか?」と問う。ネオは「いいや、人生は自分で決めるものだ」と答えた。この台詞を聞いたとき、勇気がわいて元気が出た。が、2作目の『リローデッド』でネオは、預言者からすすめられたキャンディを受け取るのを一瞬躊躇した後、「俺の答えを知ってる?」と尋ねる。預言者は「私は預言者よ」と答える。「なら俺に選択の余地はない」と答えてネオはキャンディを受け取る。 その後、レストランのシーンでメロビンジアンも言う。「選択は幻想だ」
1作目のネオの台詞のように「運命は自らの手で切り拓く」と言えば聞こえはいい。いや、その志は非常に大切だと思う。が、実際には「選択は幻想」なのだ。この辺りの議論を第5章はわかりやすく解説してあり読み応えがある。
第6章「『インビジブル』でカントが解る」を読めば、「なぜ人を殺してはいけないのか?」という問いに答えることができるだろう。が、同時に「なぜ人は道徳的に振舞わなければならないのか?」という問いには答えがないことを知る。
個人的なことで恐縮だが、30代に入ってからは物事の細かいTips的なことよりも、より広く俯瞰的に捉える抽象的なことに興味を引かれるようになった。この「哲学の冒険」は、そういう今の気分にピッタリ合った本で非常に楽しく読むことができた。オススメ~。
