坂本龍一「音楽は自由にする」

2009年05月15日 15:06 [books] [music]

坂本龍一「音楽は自由にする」を読んだ。2年2カ月にわたるロング・インタヴューに基づく、初の語りおろし自伝。

今でこそ音楽の趣味が割とロック寄りになりつつある俺だけど、10代の頃は坂本龍一が最高のヒーローだった。ライヴにも何度か足を運んだことがあるので、いちファンとして本書を興味深く読んだ。

坂本龍一にあまり詳しくない人でも、その業績の片鱗くらいは目耳にしたことがあるだろう。世界を股にかけて精力的に活動する姿が容易に想像できるが、ご本人の口からは実に意外な言葉が語られている。下記は本書233ページ目からの抜粋。

だいたい、YMOだって誘われたから始めたんですよ。どうしてこんなこと引き受けちゃったんだろう、でもまあ細野さんから声がかかったのはうれしいし、みたいな感じで。考えてみると、自ら進んで始めたことなんて、たぶんあまりないんですよ。うしろ向きの人生ですよ。
自分としては、あまり手を広げずに、むしろなるべく狭めて、音楽だけやっていられれば幸せなんですけどね。いろいろなことに関わって、いろんな体験をする羽目になっているんです、行きがかり上。

坂本龍一ほど手を広げまくった音楽家は世界でも稀かと思う。今までも、そして恐らくこれからも現れないだろう。なので、上記の言葉を真に受けるのはどうかと思うが、とりあえず本音半分、謙遜半分くらいに読んでおいた方がいいような。

実際、手掛けた音楽はポップな歌謡曲からクラシカルな映画音楽、そして実験色の強いものまで多岐に渡る。その守備範囲の広さは驚異的。ファンの間でも、フェイバリットに挙げる作品は相当割れるような気がする。

ところで、本書では昨今の音楽産業を取り巻く状況の変化にも言及されている。下記は本書233〜234ページ目からの抜粋。

今、世界的に、音楽の値段は限りなくゼロに近づいています。CDという形で音楽を買う人はほとんどいなくなりつつありますが、ではインターネットからのダウンロード販売がそれを補っているかというと、そうとも言えない。結局、音楽は消費されるけどお金は支払われない、という状況が加速しています。

この流れは、音楽がデジタルデータになった時から必然だったのだろうと思う。人は、容易にコピー出来るものにはお金を払いたがらないのだ。

もちろんこれは音楽に限ったことではなく、テキストだろうが画像だろうが映像だろうが、デジタルで作成されたものはいずれ同じような道を辿るのだろう。

今後、デジタルの著作物は無料公開が当たり前になっても不思議ではないが、著作者は霞を食って生きる訳にもいかないので、どうしたもんかなと思う。個人的にも以前からいろいろ思案中。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://milkcrown.org/cgi/mt/mt-tb.cgi/774

コメントどうぞ。

(投稿されたコメントは、承認されるまでは表示されません。ご了承ください)