ナシーム・ニコラス・タレブ(Nassim Nicholas Taleb)の 「まぐれ(Fooled by Ramdomness)」 を読んだ。最近読んだ本の中で最もオモロスで、大袈裟でなく出会えたことに感謝したくなる一冊。
「投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか」 という副題がついている本書は、金融市場や日常生活において偶然や運が果たしている隠れた役割と、人間の思考と感情との知られざる関係について書かれている。
人は投資で儲かると自分の実力だと思い込み、損をすると運が悪かったと思う傾向がある。投資に限らず、物事がうまくいくのもいかないのも、「たまたま」 じゃねーの? というのが本書の主張。
とは言え、これだけでは誤解を招きかねないため、本書 「はじめに」 より以下を抜粋して掲載しておく。
この本で書いたのは 「物事は私たちが思っているよりたまたまなんだ」 ということで、「物事は全部たまたまなんだ」 ではないということがなかなかわかってもらえない。
なぜわかってもらえないのかというと、
私たちの脳みそは確率が高いとか低いとかの話が簡単にわかるようにはできていない。すぐ 「あるかないか」 なんていう極端な話になってしまう。
投資に限らず、ビジネスでもスポーツでもエンタテイメントでもどんな分野でも構わないが、成功した人や会社やヒット商品などが世間で持て囃されるのはよくあることだ。そしてマスコミなどが、その成功要因などをもっともらしく分析し、解説したりするのもよくある。そして、それらを有難がって拝聴してしまう俺ら。
しかし、成功者(?)へのインタビューやヒット商品の分析などを読んだり聴いたりすることに、果たして意味があるのか疑問を感じることもよくある。
例えば、テレ東の 「カンブリア宮殿」 とか観てると、実に様々な経営者が登場する。そして当然、社風も異なる。同じ業種でも、飛び込み営業させている会社もあれば、させない会社もある。対照的な営業方針だが、もし双方の業績が良い場合、一体どちらが正しいのだろうか?
結局のところ、本書で述べられているポパーの 「反証主義」 によれば、白鳥がすべて白いとわかることは決してないのと同様、どちらも一時的に容認されるだけで、正しいと証明することは出来ない。この 「反証主義」 は本書でも重要な箇所なので、一読されることをオススメ。
また、本書は投資に興味がない人や学生にもオススメ。人によっては、本書を読むことで生きることが少し楽になるかもしれない。
もし読むべきか否か迷っているなら、とりあえず本書300ページ目の 「偶然と人としての品格」 だけでも読んでみるといいだろう。
昨年、世間では 「品格」 本がベストセラーになっていた。俺はそれらを読んだことはないので比較できないが、タレブの語る 「品格」 には大いに共感できる。真に 「品格」 が問われる局面は、物事がうまくいっている時ではなく、運命の酷い仕打ちで傷を負った時なのだ。
本書を読んで、勝手ながら著者タレブ氏に 「ケロロ小隊のクルル曹長」 のような印象を受けた。周囲に迎合せず、群れず、冷ややかな目で他人をバカにしてる嫌なヤツ・・・なんだけど、そのビターテイストな筆致の裏にある主張はすこぶる正しくて共感してしまう。カコイイ。